JNRSメールニュース 第21号 (2021/8/30)
目次
(21-01) 「ウランの化学(I)-基礎と応用-」 佐藤修彰, 桐島 陽, 渡邉雅之、東北大学出版会,ISBN978-4-86163-345-4, 発売日:2020年6月21日
(21-01)「ウランの化学(II)-方法と実践-」 佐藤修彰、 桐島 陽、 渡邉雅之、佐々木隆之、上原章寛、武田志乃 著、210 ページ、東北大学出版会、ISBN978-4-86163-356-0, 本体 3,000円+税 発売日:2021年4月2日
会員の著書紹介
書評 日本原子力研究開発機構 北辻章浩博士
本書は、実験化学に重きを置くウラン化学の専門書として2020年に刊行された「ウランの化学(Ⅰ)-基礎と応用-」に続く、シリーズ第2巻である。続編では、実際にウランを扱う研究を行う上で必要となる実務的な事項から実験テクニックやノウハウまでが実例を挙げてまとめられている。
第1部では、核燃料物質としてのウランの使用に係る法規制や計量管理、放射性物質としてウランを安全に取り扱うための実験設備や器具等が解説されている。また、ウランの分離や試料調製を行うための化学操作として、溶液化学、高温化学、溶融塩浴、真空/雰囲気制御下での実験手法が網羅され、必要な設備と手順が具体的に示されている。放射性物質であるウランを実際に取り扱う際に注意すべき事柄、放射能汚染の形態とその除染方法、生物影響といった放射線防護の基礎知識も習得できる。
第2部の実践編では、原子炉燃料にも用いられるUO2をはじめとした、各種のウラン化合物を対象とした分析・試験例として、固体試料の作製やトレーサー実験法、放射光施設や原子炉といった大型研究施設を利用した照射実験、新しい分光分析技術、生体内におけるウランの状態分析などが紹介されている。これらは、著者らが実際に行った実験・経験に基づき具体的に解説されており、非常に臨場感がある。
ウランを扱うホット実験は、敷居が高く感じられがちであるが、本書ではウラン研究を開始するために必要な基本知識を習得できるだけでなく、実際の研究を身近に感じられる一冊である。これから核燃料物質のホット実験に携わる若手研究者だけでなく、放射化学研究の新たな展開を模索する研究者にも是非お勧めしたい。
目次
序文
第1部 方法編
第1章 施設と設備
第2章 物質管理
第3章 放射性物質取扱の基礎
第4章 溶液を用いる実験方法
第5章 高温を用いる実験方法
第6章 真空と雰囲気制御
第7章 ガラスを用いる実験方法
第8章 反応性ガスを用いる実験方法
第9章 汚染評価と除染
第10章 環境中のウランと生体への影響
第2部 実践編
第11章 固体化学実験
第12章 放射化学実験
第13章 塩化物溶融塩を用いる電気化学実験
第14章 放射光実験
第15章 実照射実験
第16章 UO2分光実験
第17章 生体中のUの状態評価
索引
以上