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JNRSメールニュース 第20号 (2020/7/27)

 

目次

(20-01) 「ウランの化学(I)-基礎と応用-」 佐藤修彰, 桐島 陽, 渡邉雅之、東北大学出版会,ISBN978-4-86163-345-4, 発売日:2020年6月21日

 

(20-01) 「ウランの化学(I)-基礎と応用-」 佐藤修彰, 桐島 陽, 渡邉雅之、東北大学出版会,ISBN978-4-86163-345-4, 発売日:2020年6月21日



会員の著書紹介 書評
京都大学工学部 佐々木隆之教授


ウラン元素の発見から100年以上を経て、その膨大なエネルギー源を広く平和的に利用するようになった。しかし、福島第一原発事故や国内外で起きた様々な事故トラブルを見るに、ウランの原子力利用には、責任感や倫理観を備え、高度な専門知識を有する研究者、技術者の確保が不可欠であるとの認識に改めて至る。人材、研究施設ともに拡大傾向にない原子力関連の各組織は、人材確保の必要性を唱え、原子力や廃炉に関わる様々な教育プログラムを運用し育成に努めている。学ぶ側にとってウランを扱う実経験は座学に勝る。それが容易でないとなれば、知識としての様々なウラン物質の反応やその性質を、手に取るように会得することが次善の策であろうが、中々それに適う座学書は少ない。本書では著者らの実経験を踏まえ、まず、ウランが形成しうる様々な固体化合物について、その調製方法や化学的性質の分析評価手法が、最新の事例も交えつつ詳細に述べられている。化合物の一部は、現行の軽水炉燃料サイクルに現れないものであるが、原子力黎明期からの幅広い研究により築かれた知見を併せることで、ウランの特徴をより深く学修できるよう構成されている。さらに、燃料の製造から使用済燃料再処理に不可欠な様々な化学反応プロセスを軸に、ウランの溶液中での状態、挙動が網羅されている。また福島第一原発事故で生じた燃料デブリにも焦点を当て、その処理・処分を検討する端緒となる知見が紹介されている。ウランを利用した工業製品の実例も挙げつつ、原子力化学分野に関心のある学生、職業人が「ウランって何だろう」と思うときの専門入門書に相応しい。そして専門家がウラン化合物の反応や化学的特性を確認したいとき、傍らにまず置きたい本である。なお、続編としてウランの化学(II)(仮)の刊行が予定されており、ウランに纏わる様々な実験手法などが詳述される予定である。


目次
序文
第1部 基礎編
第1章 ウランの基礎
第2章 金属
第3章 水素化物
第4章 酸化物
第5章 ハロゲン化物
第6章 13族および14族元素化合物
第7章 15族元素化合物
第8章 カルコゲン化合物
第9章 ウラニウムイオンと溶液反応
第10章 塩および錯体
第2部 応用編
第11章 評価方法
第12章 核燃料サイクル
第13章 燃料デブリの生成と評価
第14章 原材料と製品
索引



                                      以上