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JNRSメールニュース 第19号 (2018/11/30)

 

目次

(19-01) 日本文化財科学会第12回論文賞を、本会会員の論文が受ける
      /「北東アジアのシルクロード」の起源を炭素14年代測定法で解明

 

(19-01) 日本文化財科学会第12回論文賞を、本会会員の論文が受ける
/「北東アジアのシルクロード」の起源を炭素14年代測定法で解明



日本放射化学会会員であり、名古屋大学 宇宙地球環境研究所 年代測定研究部の小田寛貴博士の,函館工業高等専門学校の中村和之教授(法政大学国際日本学研究所客員所員を兼任)との共著論文[1]が、日本文化財科学会第12回論文賞を受賞した。この論文賞は、数年に1件、価値ある業績に絞られて、授けられているものである。
論文タイトルは「加速器質量分析法による蝦夷錦の放射性炭素年代測定-「北東アジアのシルクロード」の起源を求めて-」である。
中国からアムール川流域、サハリン、さらに北海道を経由して本州に至る、もう一つの シルクロード、「北東アジアのシルクロード」は、鎖国政策をとっていた江戸時代(中国は清代)までは交易路としての存在を遡ることはできていたが、それ以前の起源はよくわかっていなかった。小田博士と中村教授はこのルートで日本にもたらされた絹織物「蝦夷錦」[2]のC14年代測定を行うことで、「北東アジアのシルクロード」交易の始まった時代を探求した。その結果、いくつかの蝦夷錦試料のなかの一つが元代末期もしくは明代初頭という年代をもつことが実験的に確認された。 清代以前まで溯る可能性を示唆する碑文等の存在が数点知られてはいたが、自然科学の面から裏付ける証拠を発見したことになる。

この研究成果は、名古屋大学、函館工業高等専門学校、法政大学から、それぞれ、プレスリリースされた[2,3,4]。また、2018年9月に京都大学で開催された本会の年会/討論会でも報告された(小田博士による口頭発表)[5]。演者による発表後、熱量の高い質疑応答がなされていた。



[1] 小田寛貴、中村和之:考古学と自然科学、Vol.75,41-58 (2018)
[2] 名古屋大学HP: http://www.isee.nagoya-u.ac.jp/award/20180906.html
   (蝦夷錦の美しい写真付き)
[3] 函館工業高等専門学校HP:   http://www.hakodate-ct.ac.jp/news/16270.html
[4] 法政大学HP:http://hijas.hosei.ac.jp/news
[5] 小田寛貴、中村和之: 2018日本放射化学会年会・第62回放射化学討論会、2B07 (京都大学、2018.9.19)
(YS)
                                      以上