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会長に就任して

日本放射化学会会長 中西友子

 この度、日本放射化学会の会長に就任いたしました。私は現在、大学の農学系の組織に属しておりますが、このことは放射化学の現状を物語る一面を表しているかもしれません。かつては理学系の放射化学の研究室で学んでおりましたが、その後、生命科学や医学等様々な分野を経て農学部で研究を行うようになりました。しかし、研究内容の面においては、所属とは無関係に、常に放射化学を基盤として共に歩んできたという自負があります。周囲を見回しますと、私と同様に、かつての放射化学関連の研究者の方々も様々な分野で活躍されており、必ずしも放射化学という看板の元にはおられない方がたくさん見受けられます。つまり放射化学は非常に広い分野への応用が可能であり、また、それらを支えることができる学問なのだと痛感しています。ただその応用性はさておき、根幹である「放射化学」という看板を掲げこの分野の人材を輩出する研究室が、日本にもうごく僅かしか残っていないことがひとつの大きな問題だと感じています。最近逝去された、米国カリフォルニア大学バークレー校の故H. Nitsche先生が、数年前、国際会議の昼食会で、全米の放射化学という名前のついた研究室の数について話されていました。先生のお話しでは、米国においてもその数はかなり減ってきてはいるものの、その減少は米国においては底を打ったということでした。
 一方、日本では2011年3月11日の福島第一原発事故以来、日本中の人が放射線や放射性物質に関心を持ち、それらは何なのか、また影響はどうなのか等について熱い眼差しを注いでいます。このように、かつてないほど一般の人の放射線に関する関心が高い時に、学会としてどうそれを説明し発信していけるのか、それが放射化学討論会時代からの長い歴史を持つ放射化学者の集まりである日本放射化学会の一つの大きな役割だと感じています。 
 このような背景の元で、日本の放射化学の学問の中心を成す日本放射化学会を、将来に向けていかに活力のあるものにしていくのかが私の第一の課題だと考えています。そのためには、まず、学会の基盤の強化ならびに学会の更なる活性化が必要だと考えます。学会の基盤強化については、例えば他の関係する学会や会合とのコラボレーションが考えられます。放射化学という学問の重要性をもっと広く認知させていくためにも、関連するいろいろな分野の方々と、様々な機会を通して積極的に協力していくことが大切だと思います。例えば米国の放射化学関連の国際会議はかなり内容に関連性のある分野を入れ込み、放射化学との意見交換ができるようになってきています。原子力関連の例を挙げると、事故処理のみならず、溜まっている放射性廃棄物処理などについても放射化学の知識が不可欠です。
 学会の活性化について考えられることの一つは、学会内における広報活動の充実化です。例えば会員一人一人との意見や情報のやりとりをもっと活発にしていくため、会員間の積極的なネット活用が考えられます。主催や共催をしているシンポジウムなどの会議の案内あなどは既に行われていますが、ネットを通じた研究内容に関する情報共有や互いの議論をもっと活発に行い、特に学術面での過去の知見、今後の展開、Q&Aなど、放射化学を学ぶ上での情報が日常的に議論できるようにしたらいいのではないでしょうか。そして研究を進める上での具体的な実験操作や測定方法、あるいはそれらの応用についても知識の共有化を図っていきたいものです。福島の事故についても、放射化学の面からの解析や意見についての発信がもっとあってもいいのではないかと思います。
 これらはまだ考えの一端にすぎません。理事会の方々をはじめ、会員の皆様の考えを最大限反映していく中で、日本放射化学会の活性化をいろいろな面から図っていきたいと考えています。